2015年1月3日土曜日

シュレックが突き付けるPC(差别偏見)表現について。


前回に続きPC論が盛り上がってるようです。

※PC:  ポリティカルコレクトネス
差別や偏見のない公平さ(からみた表現)のこと。

ベイマックスの「政治的正しさ」とクールジャパン - Togetterまとめ

 ベイマックス観てきた。すごかった。凄すぎてゾッとした。出来が良すぎる。隅々まで違和感がない。ジャパニメーションの優位性だと思ってたものが完全に取 り込み終わってる。「PCに配慮なんかしてたら〜」ってのが甘えにしか聞こえなくなる。「クールジャパン」なんて一瞬で踏み潰されるぞこれ。

 ストーリーとかキャラクター設定とかのことはたくさん語ってる人がいる通りなんだけど、私は背景の美術の違和感の無さに終始絶句してた。ハリウッドやディズニーの作品で、和洋折衷の町並みが標識看板の一個に至るまで完璧。少なくとも日本の部分はそう見えた。

 こんなもんでいいだろ、って嘲る感じが全くなかった、ベイマックス。予算があるといえばそれまでだけど、それを「不快感のなさ」にここまで注ぎ込めるのかと。格が違う。

 これはそれこそ散々言われてることだろうけど、研究室の描写や各人のこだわりや情熱が一切軽んじられず全部魅力になってることが本当にすごいと思ったよ。工学系の研究室は知らないけど、こういう描き方ならイラつかないだろうなとなんとなく思った。

 PCに適合するっていうのは、配慮することじゃないんだな。リスペクトできてるってことなんだ。いろんな物事に対する敬意があるってこと。それをすごく感 じた。PCに適合しない作品はどんどん売れなくなると思う。面白さの質が全く違う。偏見のせいで魅力を取り込めないって意味になると思う。

 日本の感覚がこのままだと、ジャパニメーションやクールジャパンは偏執的なだけのB級扱いに落ちるだろうって言ってたツイートみたけど、その意味がよく分 かった。こういう感性の作品がこれからどんどん量産されるのかと思って、観ながらずっと恐ろしかったよ。これは同じ土俵に乗れなくなるレベル。

 「これは男の世界」「女は観るな」「アナ雪は男を軽んじてる」等等、狭い縄張り争いしてるのが本当にせせこましく思えるわ……。そんなことしてる間にどんどん置いて行かれるんだろうな。全力で見せつけられた。怖いわ、本当に怖い。震えながら観たよベイマックス。すごかった。


「いろんな物事に対する敬意がある。」
「PCに適合しない作品はどんどん売れなくなると思う。」
「もはや狭い縄張り争いしてる次元ではない。」

この意見と結論はかなり同意です。
 「いろんな物事に対する敬意がある。」というのは
まさに作品作りの本質だと思います。
髪の毛一本、1フレームしか映らない置物ひとつとっても3年間全力を尽くす
なんとなく八百万の神々というか、 総指揮ラセターらしい作品作りで、
こんなとき差別表現で縄張り争いしてる場合ではないという結論も確かに。


でもその間に挟まってる、
「PCに適合しない作品はどんどん売れなくなる」は違うと思ってて
僕は
「細部が適当な作品はもとから売れない」
「細部をきっちり作れば最低限のPCは守られる」
という認識です。

作品から完全に差别や偏見はなくせないし、
見てる人誰ひとりも傷つけない作品はないと思うので、
PCに適合かどうかはあまり関係ないと思います。

「不快感のなさにPC配慮にここまで予算を注ぎ込める」
というのも因果が逆だと思ってて、

「いろんな物事に敬意があれば、
何事も偏見なくフラットに魅力を追求しつづけるので
差别表現というレベルを意識するまでもない。」
のでしょう。


シュレックの突き付ける差別表現


差别、暴言、偏見が盛り込まれた「シュレック」なんですが、




ドリームワークス制作で、アンチディズニーとして作られ
当時ディズニーやピクサーのような
正しすぎるお伽話に飽き飽きしてる人達以外にも大ヒットしました。

ディズニーやピクサーを抑え、
初のアカデミー賞アニメ長編部門を獲得し、
シリーズの興行成績がギネス記録となり
ピクサーと充分並び称される存在です。

『シュレック』が“世界興行収入No.1アニメシリーズ”としてギネス認定! - エキサイトニュース


シュレックは差別される側ですが、
化け物でブサイクで下品で衛生的にも言葉遣いも汚いという
わりとギリギリの不快感を狙っています。

ネタばれになりますが、
エンディングで呪いが解けるフィオナ姫は
綺麗なお姫様ではなく、
ブサイクな化け物が本物の姿として呪いが解けるんですね。
コメディ映画的には笑うところなのかもしれませんが、
シュレックのズレた感覚では「とてもきれいだよ」と言って
ハッピーエンドとなります。

ディズニーを批判したコメディとして受け取るのもいいのですが、
これを正しいありのままの物語ではなく
シュレック全編を笑って受け取れるというのはつまり、
「差别も偏見も作り手ではなく、受け手である観客にある。」
ということを証明しています。

コメディ映画であるはずのシュレックが
アカデミー賞を取ったというのも
我々がいかにありのままの現実ではなく、
ステレオタイプな偏見を通して物事を見ているか、
というアンチディズニーだからこそなしえた事にあると思います。


現実に差别や偏見があって、
それが自然と物語や主人公にあってもいいと思うんです。
興行に関してはピクサーやドリームワークスみたいに
どこまで細部を作りこんで説得力をもたせるかということであって、
「誰も不快にならないよう差別表現は撤廃しよう」
ではないんですよね。


少年少女に与える物語は、ディズニーとマーブルみたいに民主主義で作る物語だけでいいのか?


今のディズニーはピクサーのジョン・ラセターが製作総指揮を取り、
NHKの特番で見た限り、アナ雪もベイマックスでも
ものすごい細かいことにたくさん口出ししていますが、
それはひとつの意見ということで、脚本や監督以外のスタッフみんなで
アイディアを出し合って全員の意見を聞いてブラッシュアップする作りです。
ひとりの監督が全部を仕切って作るわけではない。

(今やディズニー傘下の)マーブルコミックも、
版権が特定の作者にあるわけではなく
マーブルにある版権を沢山の作家が意見出しながら書くという
ハリウッド方式です。

僕は差别も含めた猥雑な作品が沢山ある方が健全だと思うし、
少年ジャンプや、深夜アニメがみんなディズニー方式を目指して
丸くなってほしくない。

一人の作家や監督が突っ走る尖ったものも沢山観たいわけです。
ディズニーやマーブルコミック以外はレーティングして
メジャーで手が届くところには置かないでおこう、
という正義の均一化みたいな世界にしてしまうのは嫌です。

アメリカ人は陽気でなくてはいけないとか、
アナみたいな引きこもりは映画のように
障害を克服して外に出なければいけないという物語しかない世界は
むしろマイノリティに優しくない世界ではないでしょうか?


PC規制などができると悪役が主人公のマンガが読めなくなる


BASTARDや、平野耕太作品はレーティングかけられて、
中高生は読めなくなるでしょう。
そもそもアメリカだと発売もできないかもしれないですが
そういう作品は成人になってからしか読めないというのでは
大きな損失に感じます。

ONE PIECEも「海賊」という点で抵触しそうですよね。


面白い作品で差別表現が無ければ世界で売れる?


売上に関しても、
ディズニーよりPC適合から外れてるシュレックだって大ヒットしたし
それこそ深夜アニメよりずっとPC適合してるはずの宮崎アニメは
日本文化に根付いた作品で
鈴木敏夫のマーケティングによるものですが
世界では売れていません。
PC適合した面白い作品は世界で売れるかというとそうでもないですよね。

どちらかというと、
日本から世界市場に向けたアニメを作ろうと本気で行動するバカが
まだいないか、芽を出してないだけであって、
この手の話で少年ジャンプや深夜アニメと、
世界配給前提のディズニーを比べるのがおかしいかと。


日本のマンガやアニメは最初から国内狙いなのになぜディズニーと比べられるのか?


少年ジャンプや深夜アニメは
国内向けにでさらにターゲットを絞って作られているので
世界配給をA級とするなら、どれだけ売れても最初から国内B級狙いで
闘う土俵が違うのは当然のはず。


それでもよく同じ扱いで同じ土俵で議論されてしまうのは
変身したら強い金髪白人になるドラゴンボールや
最初から金髪白人のNARUTOや、
金髪ロングのセーラームーンがたまに世界A級ヒットしたりするからであって
それだけ前例があるのなら
他のマンガやアニメも世界狙えるんじゃないかと、
クールジャパンとか勘違いするからじゃないでしょうか。

世界狙うなら最初から世界配給前提で作らないと
ジャンプからたまたま宝くじのような
偶然の世界ヒットを頼って比べてもしょうがないわけです。

逆にドラゴンボールのような、TVアニメから
大ヒットの前例がいくつかできてしまったことで
ディズニーのように予算リスクを抱えて世界興行しよう
という芽を摘んでるのかもしれません。


大ヒット作品はそれだけで人を傷つける


あえて差别偏見を気にしても仕方ないと僕が思うのは、
アナ雪も、ベイマックスも、シュレックも、ドラゴンボールも、進撃の巨人も、
表現というものは何かしら人を傷つけるものだからです。
みんなが感動して面白かったといっても、
大ヒットして見る人が多ければ多いほど、
なにかしら腹が立ったり、傷ついたりする人も多くなるものです。

それで作品を見て、
Twitterやブログに批判や文句を書くのは構わないですが
それで終わり。
もしかして作者がそれを見て怒ったり、
次回作で気を使ったりするかもしれませんが、そこまで。

作り手は自分の思考をそのまま表現するのが仕事で、
アナ雪やベイマックスで傷つくかどうかは受けての問題であって、
どういう世界観を信じてその信じてる正義に染まってしまえばいい
という偏見にあると思います。

例えば、女性や子供は守らねばならないとか、
権利はみんな平等になくてはいけないとか、
民主主義として多数派が正しいとか、
日本が異常で多数派の欧米が正しいとか、
(欧米の社会が安全じゃないから世界の常識が歪む可能性とか)
自分では絶対的に信じて疑わない正義すら偏見です。
「世界はこうあらねばならない」
ということがあれば、
自分で疑いもしない正義と、コンプレックスの裏返しが隠れていて
どんな作品にも自分が正しいと思い込んでる正義の反発はあるので、
やはり受け手の問題なのです。

問題といっても、自分の価値観を変えろとか、
違う価値観を受け入れろとかではなく
好きなだけ怒って終わり。
でも、それでモヤっとしたり社会的影響を恐れたりするのは
元々正義も悪もルールもないこの世界や他人を
どういう正義であらねばならないと思い込んでるのか
自問自答するのも悪く無いと思いますよ。



この議論は、日本から世界興行収入ランキングに入るような
アニメ映画が出ない限り続くのかもしれません。
そんなことを目指すバカがこれから現れることを願います。



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