2015年1月6日火曜日

日本のケータイメーカーはなぜ敗けたのか



日本のケータイメーカーはなぜ敗けた、という問い

その後iPhoneが登場し、市場はまたひっくり返りました。
当時、日本の通信キャリアもメーカーもスマホを軽視していました。
3Gを世界に売らなかったこと、スマホを作らなかったこと、
の2点の失敗で現在に至ります。
わかっていても、日本市場が大きく、
通信キャリアに依存すれば食えた面はあります。
政策の適否を指摘する声もあります。
でも状況とチャンスはサムソンもアップルもさほど違いはなかったはず。

それはつまるところなぜなのか。ぼくにもわかりません。
結局は「経営者」の問題に行き着くのでしょうか。

だとすると、経営者を育てるにはどうするか、という問題となります。
日本はプロ経営者が少なく、社内から叩き上げてきて経営者となるため、
経営者に強く意見する風土に欠けているといいます。
でも、トヨタのように同族経営でも世界に伍す企業はあるし。
ソニー、ホンダ、ユニクロのように創業者が経営者として世界的な企業を育てたこともあるし。

もちろんその問いへの答えをぼくは持ちあわせてはいません。
そこで「学」がすべき仕事は何があるのだろうかと考えこむ次第です。


理由がいろいろありすぎて決め手に欠けますが、
Appleと日本メーカーで毎回引用するのはこれですね。

Shu Uesugi
アップルで働くまで、イノベーションというのは
「今にない、新しいものを作ること」だと思ってた。

でもそれは違って、イノベーションというのは
「未来にある普通のものを作ること」なのです。
この違いを理解できるまでかなり時間がかかった。

キャリアを見て商売してるわけでもなく、
メーカーを見て商売してるわけでもなく、
顧客を見て商売してるわけでもなく、
未来を考えて物を作るということ。


でも、そういう訳にはいかないですよね。
イノベーションのジレンマというか
未来はこうあるべきというのは、
たいてい今ある利益の仕組みを
壊して再構築する必要があります。


キャリアと顧客だけ見ていたら、メーカー管理のAppStoreと細部までメーカー主導のiPhoneをキャリアに売り込むという発想ができない


仮にiPhoneを当時の日本のメーカーが作った所で
肝となるOSをメーカーが握って、
当時キャリアのimodeでさえ10%のテラ銭だったところ
アプリ販売の30%をキャリアでなくメーカーが貰い受けるとか、
仕様を全部1メーカーが決めるとか、
TVもみれずキャリアが構築するおサイフ携帯も使用できないとか、
そんなの絶対キャリアを通らないでしょう。
全く話になりません。

だからそんな夢物語なプロジェクトは議題に上がるまでもなくボツです。
いかにメーカーの仕様に沿って、顧客に売れるものを作るかで
勝負することになります。
でもそれだと顧客が自分でも気づかない
本当の需要へは手が届きにくい。


未来を考えたAppleはゲリラ戦にでた


そこでAppleがどうしたかというと、
他のメーカーのように最大手ドコモの顔色をうかがうのではなく、
キャリア最下位で当時は電波状況も悪い
ソフトバンクと交渉したわけですね。
本国アメリカでも最大手のベライゾンではなく、
最初はAT&Tでの独占販売となりました。

ソフトバンクやAT&Tとしても、
利益の源泉となりえるテラ銭ごとAppleに取られ、
最優先でiPhone有利に売るというのは
かなり厳しい交渉だったと思いますが、
最大手と闘うためには致し方無いでしょう。


そういうゲリラ戦なら日本のメーカーもできないことはないのですが、
それをやったらドコモやauは手を切って全力で潰しにかかったでしょう。
電波利権を手に入れた大手キャリアは官僚との関係もあるので、
まだない規制をチラつかせることもあるかもしれません。
新しい未来を作るためにキャリアでもないメーカーが、
キャリアの構造から変えようというはどれだけ無茶な話か。


交渉と組織の全体最適化


しかし部分的な話では無茶でも、全体的な話では無茶じゃありません。
キャリアはiPhoneで定額通信料が増え、
契約数が増えたら利益も上がるからです。
相手の弱みと自分の強みとを
うまく全体最適化として交渉できたら良いのです。

 部分最適化に特化して部門のつながりが薄いと言われる日本のメーカーは
そういう文化からなんとかしないといけなくて、
官僚もキャリアも自らの責任部分しか見ず全体を考えれないような
組織構造になってますから交渉も大変になります。


全体最適化が難しいのは部門や人の評価に至るまで
組織構造そのものを再設計し直さないといけないので、
今までのやり方で大きくなったメーカーでは
それぞれの利権やプライドとも異なり反発も必至でしょう。


Appleとサムスンはブラック新興企業


今回Appleとサムスンが例に出ていますが、
実は彼らは古いようで新興企業です。
AppleはMacのシェアが無くなっていく中の倒産寸前を
(独占禁止法を恐れた?)Microsoftに助けてもらい、
ジョブスを再招聘して容赦無い大改革を行いました。

サムスンは2代目会長が「第二創業宣言」「親と子供以外全て変えよう」
と、朝7時出社とかわりとブラック的な大改革を断行しつつ、
97年のアジア通貨危機で倒産しかかりながらも、
世界中から頭のいい人を集めて、自分達が何をすべきかと
当時の「DRAM」「液晶」「携帯」に資本と人材を集中させ
そうとうな痛みをもった大改革をやって生まれ変わったわけです。

そんな軋轢を産むような、
会社を根本から変えてしまうような大改革は
日本がアメリカが韓国でも普通はなかなか出来ないでしょう。


大改革じゃないと組織は変われないのか?


組織が変われないなら、別に組織を作ればいい。

という考え方もあります。
良い例がソニー・コンピュータ・エンターテイメントです。

ソニー100%子会社でありながら、
全くソニー本社のやり方とは違う経営で、絶対王者だった任天堂を脇に
ゲーム市場を2分するほどの活躍を見せました。
ソフト面では任天堂に煮え湯を飲まされ続けたナムコと、
インディーゲームかと思わんばかりの新興ゲーム企業連合という
これもかなりゲリラ戦的な展開でしたが、
昔の殿様商売から抜け切れない任天堂に嫌気がさしてたメーカーは多く
奇跡的なトップシェアを取ります。


また、セブン-イレブン・ジャパンも、
イトーヨーカドーの子会社で、
定価販売の小規模小売店なんか成立するわけないと
役員から大反対されてところ、
今やセブン&アイ会長の鈴木 敏文が自らの責任で子会社設立となり、
少ないスタッフながら苦心してなんとか1号店を開拓し、
本家のイトーヨーカドーより大きな商売へ発展させました。


imodeを作ったNTTドコモも、NTTの子会社だったのが親より大きくなって
歴史的に新聞の子会社のラジオ会社が、親より大きくなって
ラジオ会社の子会社のテレビ会社が親より大きくなったのですから
イノベーションのジレンマを避けるには、
かわいい子には旅をさせて、親を超えよ。
という回答もあるんじゃないかと考えます。


まあソニー・コンピュータ・エンターテイメントは、
PS3にコストかけすぎたのと、
本家ソニーの会計、戦略事情などで
本体に吸収されてしまったのがちょっと残念ですが
吸収してなおONE SONYとして
全体最適化ができるのならまだ可能性はあるでしょう。



と、かなり抽象的理想論ではありますが、
組織のあり方から問われるなら、
一回本社が潰れるぐらいの痛みをともなうか
新しく子会社作りなおし、
Appleやサムスンはそれぐらい充分クレイジーなことしてる
というのが記事の問いかけに対する僕の感想でした。

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